原作Rooster Teeth Productions スタッフ オフィシャルインタビュー記事掲載!

「RWBY VOLUME 3<日本語吹替版>」公開!来日スタッフに直撃インタビュー 

ウェブでシリーズをスタートし、世界のポップカルチャーファンを熱狂させたRooster Teeth Productionsの3DCGアニメ『RWBY』。
2015年10月に『RWBY VOLUME 1<日本語吹替版>』として日本上陸し、感度の高いファンの間で熱狂を巻き起こしているのは、すでにご存知だろう。
今年10月26日には「VOLUME 2」、12月3日には「VOLUME 3」の<日本語吹替版>が相次いで公開、予想を上回る大展開を遂げたストーリーがファンを驚かせた。
さすがはRooster Teeth Productionsと唸らせる充実の仕上りだ。

この「VOLUME 3」公開に合わせて、『RWBY』の制作スタッフが12月に来日した。
監督/脚本のケリー・ショウクロスさん、共同監督/スーパーバイジングプロデューサーのグレイ・G・ハドックさん、そして共同監督/脚本のマイルズ・ルナさんの3人だ。
しかも、ケリーさんとマイルズさんは、今回が初来日。<日本語吹替版>のために、日本を訪れたという。
日本にいる間は、公開前夜祭のゲスト出演やファンミーティングでファンとの交流をする一方、メディアの取材も受けるなど大忙しな日々を送った。そんな3人に時間をいただき、取材を敢行!
作品誕生のきっかけや、制作の様子、<日本語吹替版>の感想、さらに今後の展開など、作品にまつわるあれこれを伺った。

■ モンティ・オウムの見た夢が、そのままアニメ企画に 

――こんにちは。日本でも大人気の『RWBY』ですが、作品誕生のきっかけから教えてください。

ケリー・ショウクロスさん(以下、ケリー) 
これは (原作者の)モンティ・オウムの見た夢から始まっている。ある朝、モンティが僕らのところにやってきて、「それぞれ色を持った4人の少女が戦う夢を見たんだ」と話してくれたんだ。
その時は、僕らは「取りあえず家に帰ってもう一度寝ろよ」と言ったんだけれど、その後にモンティがこれでアニメを作ったら面白いじゃないかと動き出した。
これがものすごく面白くて、「是非、やろう!」と作り始めることになった。

グレイ・G・ハドックさん(以下、グレイ)
ちょうど僕らが『Red vs. Blue』という作品を作り終わった頃ですね。
モンティとマイルズが、『RWBY』の企画開発を進めていた。
そして『Red vs. Blue』のシーズン10が終わった段階で、モンティがトレーラーを作りたいと言って、これが本格的なスタートになった。

――それはいつ頃になりますか?

マイルズ・ルナさん(以下、マイルズ)
2013年かな。いや2012年の秋頃だ。

グレイ
Rooster Teethでは、企画のプレゼンテーションをする時は、口で話すだけでなく、何か見せながらというのが一般的なんだ。
モンティがその時に作ったトレーラーは、ルビーが自分の武器であるクレセント・ローズを使うシーン。
これが「すごい!」ということで、制作を続けろという話になった。

――その時にウェブアニメにして、自ら作品を発信しました。少し変わったやりかたでしたね。

グレイ
当時のアメリカのアニメーション作品という点では変わっていたかもしれない。
でも、これはRooster Teethでは特に珍しいことではなかったんだ。
最近では若いアニメーションスタジオも、どんどんやり始めているよね。

――ウェブアニメーションですと、ファンの反応をダイレクトに感じることが出来ます。制作する時に、通常とは違う感覚はあるのでしょうか?

マイルズ
それはとても大きな影響ある。
ただそれは作品の内容というよりも、『RWBY』を作るモチベーションの部分かな。
ファンが感動したといったコメントをしてくれると、頑張って制作しようと気持ちが強く沸いてくるんだ。

グレイ
あとは制作しつつ、リリースを続けるのは、映画というよりも舞台劇に近いかもしれない。
すぐに反響を感じられて、それで自分たちが期待する観客の反応を引き出すために頑張ろうとなりますからね。

――実際に『RWBY』の制作には、どのくらいの数のスタッフが関わっているのでしょうか?

ケリー
シーズンによって違っていて、だんだん増えているよね。

マイルズ
「VOLUME 1」では20人少し、「VOLUME 2」では40人弱、
「VOLUME 3」ではこれが50人から60人まで。いま作っている「VOLUME 4」では80人ほどまでになっている。
会社が『RWBY』に対してとてもサポートしてくれて、人材も豊富に投入してくれている。
おかげで今は複数のチームを編成して、全体のクオリティを上げることも出来ている。
ありがたいことに年々、僕らが描く理想像に近づいている。

――『RWBY』には、本当にアイディアがたっぷりなのですが、こうしたアイディアはどのようなかたちで生まれて、スタッフで共有されているのですか?

グレイ
アイディアはだいたいパンケーキ屋さんで生まれるんだ。
そこで話し合うことが多いから。Rooster Teethでは、「テキサスに住む自分たちや自分たちの友だちが面白いと感動したものは、世界にはそれと同じ確率で同じように感じてくれる人がいるのではないか」と考えているんだ。
自分たちの感覚を信じて作っていくことが重要だと思っている。

――例えばケンカをしたりとかはあるのでしょうか?

マイルズ
ケンカはないね。意見が合わないことがあれば、じっくり話し合う。
そこで何かしら妥協点を探すかたちかな。

ケリー
共同脚本というかたちがいいのかな。じっくり話し合って出来た脚本はひとり書いたよりも、ずっといいものが出来ていると感じてます。

マイルズ
もうひとつ実際に制作を始める前に、かなりストーリーを詰めいていたこともある。
もちろんそれぞれのシーズンが始まる前にも、ストーリーをもう一度練直している。
それに固執するのでなく、アニメーターといったスタッフの意見も柔軟に取り入れて、作品をより楽しく、感動できるようにといつも心がけている。

■ 「きっと驚くと思っていた」 第3シーズンの衝撃、そしてルビーたちの今後

――日本では2016年10月に「VOLUME 2」、今回12月に「VOLUME 3」が映画公開されました。
とりわけ「VOLUME 3」は、ルビーたちが世界の根幹に関わるような事件に巻き込まれ、ダイナミックに物語が動きます。
これに対するファンの反応はどうでしたか?

マイルズ
みんな驚いたよね。これは僕らも想像はしていたけれど、想像を超える部分もあった。
「VOLUME 3」の最後に起きる一連の出来事は、シリーズ構成の最初段階、「VOLUME 1」を書く以前から決まっていたことなんだ。
だからいつかここに行くだろうというのは、分かったうえで描いてきたんだ。
ファンのリアクションはある意味では期待していたけれど、実際に作品を発表するとその反応は凄まじかった。

ケリー
『RWBY』の大きなテーマに「本質は見えるとおりではない」というのがあって、
例えば、ワイスは最初登場した時は、少し冷たく、いじわるに見えたはずだ。
しかし、話が進むに連れて、よりやさしくて暖かい面があることが分かってくる。僕たちは『RWBY』でこうした成長物語を描きたいけれど、制作上の理由もあり、そうした全てを「VOLUME 1」に盛り込むことは出来なかった。
逆に「VOLUME 1」ではひとつのタイプの作品を見せておいて、それに続く作品で違うタイプの話を届けられたのは逆に良かったなと思ってますね。

グレイ
『RWBY』は成長と共にある物語なので、観客の皆様も一緒に成長の体験をしてもらえると、とてもうれしいな。

――全体構想は、当初から練られていたとありましたが、原作のモンティさんが昨年、惜しくも亡くなられました。
当初にあったモンティさんのアイディアは、まだだいぶ残っているのでしょうか?

ケリー
どれぐらいのボリューム、シーズン数と答えるのはとても難しいのですね。
ただ全体の大きな流れや最終的な部分は、全員で話し合っていた時にすでに決定している。
そうした意味では、もう最終話までは準備されている。
ただ、それがどのくらいかかるかというと……。それは物語がどのくらいのペースで進むかによるので、少し答えにくいですね。

――作品のアイディアはいま全体のどのくらいまで来ているのですか?
今後、どのくらい『RWBY』が続くとかは考えていますか?

マイルズ
これは想像もつかないよね。ただ完結までにはまだ何年もかかりそうだよね。

――そうするとファンは、まだまだ『RWBY』を楽しめそうですね。

マイルズ
どこで終わるかはわからないけれど、例えいまあるお話が終わったとしても、この世界やキャラクターについては、まだ語るべきことはたくさん残されている。
同じ世界観で別の話を作ることは出来るかな。特に時間軸的にいまの『RWBY』に含まれていない物語はいっぱいあるからね。

グレイ
全体のストーリーが終わったらそれはやってみたいですね。

■ 日本で愛される『RWBY』、ファンと直接会うことを大事するのがRooster Teeth

――<日本語版>のひとつの違いとして、映画スタイルで劇場公開されているのですが、
『RWBY』をシーズンごとにまとめて観るのはどういった気持ちでしょうか?

グレイ
こうしたやりかたは、実はRooster Teethではこれまでにもあったかたちなんだ。
『Red vs. Blue』という会社を起こすきっかけになった作品があるのだけれど、この作品では2、3分のエピソードを毎週毎週リリースして行って最後には合体させました。
この制作のしかただとテレビのようなスケジュールで動くことが出来るし、しかも、最終的に映画のような作品が出来てくる。

――観客の反応も変わりますか?

グレイ
「全てのファンを楽しませる」というのが、Rooster Teethの哲学ですね。
毎回毎回少しずつ楽しみたいという人もいれば、まとめて一気に楽しみたいという人もいるでしょう。
僕たちのやりかたは言ってみればマンガのようなもので、マンガでは毎週の連載で楽しむ人がいるし、単行本でまとめて読む人もいるでしょう。
そうした楽しみ方に多様性を持ち込みたいのです。

――「VOLUME 3」の公開前日、12月2日の前夜祭で日本のファンに挨拶をされました。
その際の日本のファンの反応についてどう感じられましたか?

ケリー
とてもいい反応で、誰もがエキサイティングしていたのが分かって、とてもうれしかったよね。

マイルズ
ものすごく熱心に僕たちの話を聞いてもらえたよね。
自分たちの作品が日本でここまで愛されていることにとても驚いているし、光栄に思っています。
これとは別で翌日3日にファンミーティングを行ったんです。Twitterで呼びかけて「集まれる人は集まって!」というカジュアルなかたちでね。
ここに70、80人も集まって、その人たち幸せそうに作品を語ってくれたのが、とてもうれしかったですね。

ケリー
京都や北海道といった遠くからの人もいたんだ。なかには今回の映画のために韓国から来たというファンもいて、とても驚かされた。
コスプレをした人もいたり、非常に感動しました。この感動をテキサスに持って帰ってスタッフ一同と分かち合い、制作のエネルギーにします。
ファンと直接会うことはとても大事なこと。
もちろんネット上で情熱を分かち合うことも出来るけれど、実際会って話すのが、本当に特別なものだと思っている。

グレイ
Rooster Teethでは作品づくりで大切にすることがいくつかもあるけれど、中でも「コミュニティ」が一番大事と考えている。
だからファンと交流することに力を入れています。Rooster Teethでは作品をリリースすることはお客さんに届けるというよりも、むしろ友だちに届けるような気持ちかな。
友だちを裏切ることはしたくないから、作品のクオリティと内容については、とりわけ一生懸命になるんだ。

――もうひとつ日本語版ならではの大きな違いに、日本の声優の起用があります。こちらはどう感じられましたか?

一同 
もう最高です。完璧ですね。

ケリー
最初にワーナー ブラザース ジャパンから声優のリストを送られてきたんだ。
これを3人で見ていたんだけれど、ひとりひとりの名前や過去の代表作を見ていて、その凄さにだんだん怖くなってきて。
そこでテンションがとても高くなっていたら、「なんだ、なんだ」と周りに人が集まって、最終的には目の前で興奮のあまり叫ぶ人まで現れるほどの騒ぎになったんだ

――来日して声優さんたちとお会いされましたか?

マイルズ
前夜祭でチームルビーの声優4人が初めて揃った時に、会うことが出来た。
作品のチームとの対面ではあるけれど、いちファンとしても感動的な経験でしたね。

――『RWBY』のスタッフは、日本のアニメも大好きと聞いています。それぞれどんな日本のアニメが好きか教えていただけますか。

ケリー
『鋼の錬金術師』ですね。そして『天元突破グレンガラン』。

マイルズ
まず『カウボーイビバップ』、そして『フリクリ』。

グレイ
ケリーとマイルズには、言って置かないと。君らが生まれるずっと何十年も前から素晴らしい日本のアニメの歴史はあるんだよ。
僕は最初に『科学忍者隊ガッチャマン』『宇宙戦艦ヤマト』『超時空要塞マクロス』を観て育った。『機動戦士ガンダム』も忘れてはいけないよね。
最近は渡辺信一郎、細田守の作品や、クリエイターでは虚淵玄が気に入っています。
『サイコパス』や『翠星のガルガンティア』『魔法少女まどか☆マギカ』『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』がいいですよね。『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』も好きです。

――答えるのが難しいことを承知で聞かせてください。『RWBY』のなかで特に気になるキャラクターは誰でしょうか?

グレイ 
それはとても難しい質問だよ。自分の子どものなかで誰が一番可愛いかと答えるようなものだよね。
そんななかで敢えて言うなら、今はヤンの心情に一番心が寄せられているかな。

マイルズ 
確かになかなか答えに難いよね。それでも、もし選ぶならブレイクだろう。
彼女が心の中に葛藤を抱えていているのに惹かれている。それは彼女が個人としても思うことと、これが正しいと思うことの間で揺れ動いているからだ。
多くの場合彼女はそれを自分だけで解決することを選択するけれど、彼女はまだまだ学び、成長しなければいけない点がある。
今後きっと彼女は自分の持っている知識を活用して、よりよい解決方法を見つけるようになるのでないかな。

ケリー
僕はルビーだね。それは彼女の性格にあって、ルビーは物事の悪い面を見ないようにしていることや、常に少しでも前に進もうとしていることが理由かな。
それに僕にとっては、モンティと共に『RWBY』を作り始めた最初の頃の思い出を象徴するキャラクターでもあるからです。

――最後に、日本のファンへのメッセージを一言ずつください。

ケリー
まだ観ていないかたは、是非、試しに観てください。Rooster Teethはまだ小さくて荒削りな面もある会社ですが、誇りを持って作っています。
自分たちの作品を多くの人に観てもらいたいと思っています。
すでに観ていただいたかたには、サポートしてくれて本当にありがとう、という気持ちでいっぱいです。
皆さんがいまの『RWBY』を作ってくれました。皆さんが長くサポートしていただければ、私たちも長く作り続けることが出来ます。

グレイ
本当にありがとうございます。皆さんの応援によって、ワーナー ブラザース ジャパンとの出会いをもたらし、
こうして作品を持って日本に来るようなことを実現しました。これからも是非、応援してください。

マイルズ
この作品は見続けて貰えれば、きっと何かしら驚くような体験が出来るはずです。
またシーズンを重ねることで作品自体が成長していきます。我々もストリーテラーとして少しずつ成長しています。そうしたところも見て取れるはずです。
すでに観ているかたには、ありがとうとの気持ちが全てです。これからも見続けていただければうれしいです。

――本日はお忙しいところありがとうございました!

今回のインタビューでは、さすが『RWBY』を作っているスタッフ!と思わせるクリエイティブな様子が言葉の端々から窺われた。そして、とってもフレンドリーな3人には、まるで『RWBY』の作品のキャラクターのような気持ちが感じられた。
作品のアイディアも構想もまだまだたっぷりの様子。Rooster Teeth Productionsは、今後も素晴らしい作品を届けてくれるに違いないと確信するのに十分だ。

(文:数土直志)